たしかに正しいけど、その通りだけど。

ブログじゃないという体でまとまった文章を置いておきたい場所

音楽の好みについての7

 このシリーズ最後になります。

 今回はアニメソング(アニメの主題歌・劇中歌など)です。

 最近はとんとアニメは数を観なくなってしまいましたが、少し前まではいくつも目に入れては好ましいOPやEDを聴き込み、カラオケで歌うなどしておりました。

 そんなこんなで、(触れたタイミングが)昔の方から順番に気に入った曲をこっそりと挙げていきましょう。

 

 無駄な足掻きではありますがここで一度切ります。

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何番煎じかわからない - 第三部

 内原さんとアヤノちゃんに出会ってから1週間が経った。

 陽も昇りきらない健全な時間にしっかりとユズに起こされ、寝間着のままソファに腰掛ける。ユズは隣にぴたりと付いてから体を倒し、ゆったりを尻尾をなびかせつつ膝の上から僕を見上げた。彼女はまだ気だるい様子の僕に遠慮しているようで、それを感じた僕はユズの柔らかな髪をふわりと梳いた。

「んー……」

 目を閉じて満足気な声を上げるユズ。しばらくそろそろと手を動かしていたが、やがてまた、ここ数日ことあるごとに頭に浮かんできた、あの日の出来事に思いを馳せていった。

 あの日、彼らは僕たちにこの不思議な状況の一端を明かしてくれた。最後に「そこから先は自分たちの目で確かめてくださいね」と本当に宣っていたのだからまさしく一端だ。

 主な内容としてはこうだ。内原さんは僕の母方の実家がある信州の鄙びた村出身だということで、どうも僕の遠縁であるらしかった。そこは山間の小さな村で、そのまた一部の集落ではそのような特殊な能力を発現する者がいる。古くは狗神筋と呼ばれていた家系で、昔はもっとたくさんの人がその能力を持っていたので強く信じられていた、言わば土着の信仰のようなものがあったらしい。小さなころには夏休みなどに祖父母に会うため訪れていたのだが、そのような話は聞いたことがなかったので驚いた。ただ、今思えば身内にはとても優しく、他人には――隣の集落の者に対してですら、少し厳しいところがあったように思う。でもそれだけだ。

 ただ内原さんは僕が話す前に実家の地名を出したし、そもそもアヤノちゃんは話すし――僕にはユズ以外の犬の言葉はわからない――そう、彼はユズの言葉がわかっていた。信じるしかなかった。

 

 

 ふう、と僕はひとつ息を吐いた。正直まだ心の整理がつかない。ようやくこの異常事態に慣れてきたところだったのに、突然そんなオカルトじみたことを言われても困ってしまう。

 もしかしたら、内原さんが全部をあの場で話さなかったのも、そんな混乱を予期してなのかもしれない。きっと彼らもこんな風に混乱した時期があったのに違いない。何があってもユズとなら大丈夫だ。そう、彼らのように。

 そこまで考えて、ユズの相手がおざなりになっていたことに気がつき、彼女の顔を覗き込んだ。彼女は僕の手に甘えたまま、テレビを眺めているようだった。ユズのために犬に関係する番組を録り溜めていて、今はそれを流している。

「なんの番組だかわかるの?」
「んー……あんまりです。でもほら、今出てる子、今ちょっと怒ってます」

 画面に目を向けると、白いチワワがタレントに抱かれていた。ユズに言葉を翻訳してもらうといろいろなことがわかる。例えば、尻尾を振るのは常に喜んでいるとは限らなくて、普通の速さくらいで振ってるときは愛想笑いみたいな感じのこともあるのだとか。

「でも、お話はあんまりわからないので」

 そう言ってユズは、少し残念そうに微笑んだ。実はお母さんの言葉も大まかにしかわからないし、他人の言葉はもっとわからないらしい。だからテレビも犬のことはわかるけど、ヒトの言葉がわからず、全体としてはよくわからないのだそうだ。いつも犬が出たときだけ注目している。画はよく見えていないらしいので、音を聴いているのだろう。ちなみに動きも不自然に見えるらしい。

 画面の中の犬が今度は飼い主らしき男に随分と勢いよくじゃれついている。ちぎれんばかりに振られる尻尾を見ながら僕は訊ねた。

「あれは僕にもわかるよ。嬉しいって言ってるんでしょ?」
「『好き、好き、大好き、もっと触って』って言ってます」
「……あっ、そうなんだ」

 なんだか変な空気になってしまう。それを感じているのは僕だけかもしれないけれど。

 どうも先日からユズのことを変に意識してしまっている。突然、目の前にヒトの女の子の体となって現れた形の愛しい飼い犬。今までもそんな気持ちが湧き起こりそうになることはあったが、強く認識する前に無意識に押し込めてきた。それがヒトの常識というか、理性というか、倫理観というか――いずれにせよ、簡単には承服できない気持ちがあった。

 しかし、実際にそんなことを超越した存在を、内原さんとアヤノちゃんという実例を目の当たりにして、僕の持つ常識は揺らいでいた。盲目的に信じていたその土台が酷く不安定なものだったことに気づかされた。

 テレビの向こうの犬はしゃがんだ飼い主に飛び付くと、顔面を舐め回してはしゃいでいる。蘇るのはあの日のふたりの口付け、でも僕は、僕がユズと……?

 「口をなめるのは好きな気持ちを伝えたいからですよ」とユズはいつかに言っていた。確かに犬はそんな行動をよくしている。ユズが普通に犬に見えていたころには顔を寄せれば舐めてきてくれたものだった。でも今はヒトの姿をしている。その上、かわいらしい少女の……。

 少女の姿になってからのユズには顔を舐めることを禁じていた。急に同居することになった少女という意識が薄れていくにつれ、ユズも好きだって言うならいいじゃないかと思った瞬間もあった。でもその言葉はそういう意味では使っていないのではないかと思えた。果たして恋愛感情などというものを彼女は持ち合わせているのだろうか。――ああ、認めざるを得ない。愛玩であったのであろうそれは僕の中で既に愛情に挿げ変わっている。

 

 そんなことを考え、押し黙る僕に、ころりと転がっておなかを見せるユズ。僕はそんな無邪気な彼女の行動に後ろ暗い気持ちになる。対してユズは、何がそんな気持ちにさせるのかはさっぱりな様子である。つまりはこういうことだ。この子が、このかわいらしい純真無垢な少女がヒトではないのだと思い知らされる。これで僕がどうにかなりそうになるだとか、そういう知識は彼女にはまったくないのだ。

 それはまるで幼児を相手にするかのようだが、見た目が年頃の女の子なので始末に負えない。ましてや完全に話が通じるのは僕と、あと先週会った内原さんだけである。入力が圧倒的に足りていない。これで人間らしさとも言うべきものがちゃんと育つだろうか。そう考えると、遠からず破綻するものではあったのかもしれなかった――。

 

 

 見上げた先のおにいさんは黙って前を向き、たまに小さく長く息をはいています。そんな時は何かを考えているのだと知っていたので、わたしは黙ってされるがままになっていました。

 テレビというものに目を向けてみました。甘えた声がきこえます。何かを考えながらもおにいさんの優しい手は耳の辺りをゆっくりと、とろけるようになでてくれています。前は満足していたはずのその状況で満たされない自分がいることにわたしは気づいていました。

 わたしは少し悲しい気持ちになりました。それが良くないことのように思えたのです。でもその感情の正体はわかりません。

 おにいさんとお話ができるようになったことはとてもうれしいことでした。でも話がわかればわかるほどに、おにいさんとの違いもわかってきました。前にはしてくれたのに、今はしてくれなくなったこともありました。それでも、前よりおにいさんが困っているのか、うれしいのかがしっかりわかって、ちゃんと言うことをきけているのだから、それでおにいさんともっとなかよくなれるはずだと、そう思っています。

 お話ができない方がよかった、なんてことは、ないんです。

 

「ふわぁ……んっ」

 頭を乗せていたところがびくりと震え、わたしはゆっくりと目を開きました。

 徐々に視界が定まってくると、おにいさんは窓の方からこちらに顔を向け「お、起きたんだ」とわたしに話しかけます。震えたのは膝か、とわたしは気がつきました。そして今の状況を把握するために思い返します。

 ――どうもいろいろと考えすぎて寝てしまっていたようです。まだあんまり考え込むことには慣れていないためか、どうも長い間頭を使っているとぼうっとしてきてしまうのです。今はもう考えるのはやめよう。そう思っていると、何やらおにいさんの様子がおかしいことに気づきました。

「おにいさん、いま……」
「いや! おなかが出てたから、その!」
「……」

 あわてておにいさんが言った言葉。おなか、わたしの。――しかし考えるより先に鼻が利きます。おにいさんからただようこの匂いには覚えがありました。

 あれは確か、まだお話ができないころのことです。昔のおにいさんは今ほどわたしといっしょにいてくれなくて、わたしからおにいさんのお部屋をたずねていくことがよくありました。お部屋の前まで来て、扉を手で叩くのです。大抵は少ししたら出てきてくれて、かまってもらえるのですが、たまにじっと待っていなければならないときもありました。そんなとき、出てきてくれたおにいさんからこんな匂いがしていたことがあったのです。

 昔はそれがなんなのかわからなかったけど、今ならわかります。これはおにいさんが発情しているときの匂いです。

 黙っているわたしにおにいさんはいろいろと話しかけていますが、あまり耳に入りませんでした。

――ふふ、わかっちゃいましたよ。だってもうわたし、子供じゃないんですから。

 

 

 数日後の朝、二度寝してなお目を覚まさない彼の部屋に少女がするりと忍び込んだ。

 少女はゆっくりとベッドの端まで歩き、それから呼吸を整えて顔を上げた。

 今、彼女の目の前には愛しい人の安らかな寝顔があった。薄く開いた唇が彼女のそのおぼろげな視野でもはっきりと確認できる距離にある。今しかない、と彼女は思った。

 少女の口が彼のそれに寄せられ、そろりと出された舌がわずかに端をなぞったかに見えた。それで舌は一旦引っ込みかけたが、それでは足りないとばかりに今度こそ二度、三度と唇に這わせる。彼はまだ安らかな寝息を立てている。

 少女はしばらく様子を伺っていたが、そのまま顔を離すと、来たときのようにゆっくりとした足取りで部屋を後にした。最後まで彼が目を覚ますことはなかった。

 そして――――そこからすべてがわかってしまった。

虚無と感情と私

 なんでもないようなことを書こうかなっていうところです。

 本当に書き記しておくようなことが何にもないと何にも書けないのでありますから、まあそれはそれなのですが、でも何かしら書いておくことに意義があるような気もしてとりあえず無駄に文字数を稼いでいます。……と書きながらリアルに迫る意味のなさを感じてふにゃふにゃになってきました。この段落はなかったことにしてください。

 

 前置きにもならないぐにゃぐにゃを経て適当な近況などを。

 

○発狂

 できてないんですよね。これが。ダメだダメだ。

 お外走って狂いたいよ私だってそりゃさー自由にさー。でもなんだかんだ言い訳を立てて発狂しない自分がいるのです。走るコースが砂利道なので雨が降った翌日はダメだとか夕食が早い日はダメだとか。もっと意志を強く持たねばならない。あと5kgくらい痩せたいでしょ、デショ?

 

○筋を伸ばす

 代わりにといってはなんですが、最近は脚の筋を伸ばしています。

 大体寝る前に伸ばしています。

 最近めっちゃ体が固いことに気がつきまして、これじゃあ脚がぶよぶよ膨れてくるわけだなって思ったのです。

 きっかけはその程度のことですが、なんだかんだだらだらと続けられているのはやっぱり基本寝っ転がってできるからでしょうね。どれだけぐうたらなのでしょう。

 胡坐をかくような習慣がないので、足裏を合わせて膝を床に付けようとするやつがかなりきついです。あと正座したまま上体を寝かせるようなやつとか、仰向けで片足を天井に向けるやつとか。

 少しずつ柔らかくなっている気もします。でもだからなんなの感は付き纏う遊びです。ゴミ屑ホラー視聴に類する感慨があります。

 

○DCアイカツスターズ!

 ちょいちょいやっています。でも近くに安心してできる場所がなく、ホームがないような状態なので、出かけたときのついでとかになってしまってあんまりできていません。悲しいなあ。

 ランクは多分36くらいだし、PRは全然揃わない。でも大会は2回行きました。スパイスコードとゴシックと名の付くコーデは集めていきたいですね。(そういうカードを配布してなかったら行かないのだ……)

 新曲ではOne Stepが全然リズム取れない。とてもやばい。ダンスの伸びがいまいちになってしまう。だからって何かに影響は……ないのだろうな、今のところ。

 あとはDreaming birdをDbと略そうか、ドリバードと略そうか、Dbと書いてドリバードと読もうか考えています。なんかプレゼントとかぶっ込んできそうな響きですけれど。ちなみに他の曲は、

 1,2,Sing for You! → 12SfY

 ドリームステージ☆ → ドリステ

 Halloween Night Magic → HNM

 One Step → ワンステ

 So Beautiful Story → SBS

なんて言ってますが、12SfYは面倒なのでどうにかしたい。でも界隈でどう言われているかを調べる気はないんですよね、これが(ダメ)

 

RWBYを観た

 宅配レンタルで観ました。昔やっていたMMOを思い出す……。

 よく動いていいですね。あと声が豪華。

 誰が好きかって言うとうーんという感じですが、楽しく観られたので楽しい作品なのだと思います。得難いですよ。

 今日2巻の前編が届いたのでまた観ます。しかし後編が借りられてて……うーむ。

 

○風邪の諸症状に

 ツムラの1番。葛根湯。

 最近ことあるごとに葛根湯をキメています。ちなみにツムラのではありません……。

 解熱作用はないようですが、私は体調が悪くなると鼻水がよく出るので風邪のひき始めにはうってつけ感。あと背中とか痛くなるのでそれにも良い。葛根湯には地味に鎮痛作用があるんですな。便利便利。

 葛根湯とロキソニンがあればいい、って。ばんのうやくサイコーでちゅー。天使の雫みたいな二つ名が欲しいな。

 

○今日の巫女

 また最近は日替わり巫女ったーをやってから寝るように心がけています。

 いつか犬耳でかわいらしい巫女を引きたいな。

 大抵はNOって言ってそっと閉じていますが、たまになんとも言えないものを引いて首を傾げ、さらにごくたまに悪くないものを引いて晒しています。

 ログの検索かけると……

 とか惜しいですよね。やたら引きますがメガネはマジでNO。

 あとこれがバランスが取れてて犬耳とは別に気に入っています。

 

 ちなみに「巫女」で検索かけたら

 が引っかかって少し感情戻りました(笑う)

 

○さて、書くことがなくなってしまった

 本当に無のような生活でありますな。

 アニメをちゃんと観てしかるべき話題に乗っかるなどしないとなーって思います。義務になっちゃダメだみたいなことをよく聞きますけど、ある程度意識して観ていかないとこういう弊害もあるんだからその言説一辺倒ではいけない。何事にも実務的な程度というようなものがあります。そういうような意味で私は常に断言を恐れています。言い換えれば発散*1に怯えている。

 

 何か面白いこと降ってきてくれ、たのむー(断末魔)

*1:たびたび登場する謎の概念ですが、詳しい説明はちょっとこの脚注では書ききれないので省略しますね。

劇場版planetarianの感想を書こうと思った

 書こうと思ったのですが、特に書くこともない感じで大変申し訳ありません。

 planetarianという作品が自分の中で神格化されすぎていて、それについて何かを考えるという域をとうに越えているというのが直接の原因と思われます。でもまあ一応、何か書いておきましょう。ネタはバラさないようにしないのでそこは御容赦くださいませ。

 

 昔は鍵っ子として云々していた私は、当時普通にキネティックノベルとして発表されたplanetarianをプレイしまして、ビッグバン並の衝撃を受けたのでした。特に私を虜にしたのがロボットと人間との関係性に横たわる時間という概念でした。

 作中で言えば、ロボットであるほしのゆめみの「いつまでも待つことができます」という台詞にその感慨が集約されていると言っていいでしょう。実際問題としては電気がなければ停止するし、部品の耐用年数もあるしで、決していつまでもではないわけなのですが、それでもそれらが保たれればいつまでも、ヒトの設定した命令のとおり忠実にそれを実行するわけです。ヒトの形をしているものが。

 私はヒトの形をしているので感情移入してしまうのですが、それがそんな行動していることをふぁーっと理解したときに芽生える感慨はそれは、いじらしさにほかなりませんでした。それがロボットの可愛らしさの一側面です。そりゃスタッフの人も泣きますわな。それが予期できるんですから。しかもこの物語の設定によれば、電力供給の制限があって稼働時間数が節約されることで、実時間が程良く引き伸ばされているのです。ずっと動きっぱなしだったらもっと早く壊れていたでしょう。そのヒトが待つには余りに長いと思うだけの時間が経過し、言わば徐々にただただ壊れていく過程があって、そこに奇跡的に訪れた報われがさあ……(表現を失う)

 そしてですよ、本編を読んだ後、特典で付いていた小説版のサイドストーリー4編を読んでみたらそれがまーた素晴らしかった。世界観が一気にぐわっと拡がったのです。全体的にとてもよく出来ているなあという感想しか出てこないので細かいことが言えないのですが、まあSFでガツンと殴られた感じでした。ほとんどSFに触れたことがなかった私だったのですが、そのジャンルに興味を持ったのは、思えばこのときからだったかもしれません。

 

 ……鍵っ子ごっこは終わりにしておきますぅー。そもそも劇場版の感想じゃないやん、って。

 というわけで劇場版の感想というか、お話に入らなきゃ(使命感)

 

 劇場版はそんな、小説のひとつの編と本編の話を絡めたような作りをしています。

 小説には全部で4編、サイドストーリー……というか、お話の続きが収録されているのですが、時系列で言うとその3つ目である『星の人』が主軸でした。これは本編の屑屋がその後どうなるのかというお話ですので、劇場版は屑屋に焦点を絞って作られたものと言える感じでしょうか。

 小説版の1編目は現役時代のゆめみちゃんのお話である『雪圏球(スノーグローブ)』、2編目は苛酷な大戦最中のお話で3編目を支えるお話でもある『エルサレム』、3編目が劇場版となった屑屋のその後を描いたお話である『星の人』、4編目がその遥か未来のお話である『チルシスとアマント』となっていて、本編と合わせて5つのお話で『planetarian』という物語が完成するものだという認識が非常に強いものですから、声を小さくして申し上げますと、本劇場版には物足りない・未完結という印象がどうしても付き纏ってしまうのでした。

 

 それはそれとして、神格化された映像化してなかった作品がアニメーションになって動くって、それはそれだけでありがたいことです。ただただありがたいことです……ありがとうありがとう(言葉がない)

何番煎じかわからない - 第二部の二

 テレビで例の競技会を観てから2か月ほど経った休日の朝、僕はユズと隣県の河川敷に来ていた。
 ユズが出たがるような大会は探してみるとなかなか見つからず、距離と時間を天秤にかけた結果、少し離れた所だけどなるべく早く参加できる大会を見つけ、そこにエントリーすることにしたのだった。

「思ったより賑わっているなぁ」

「はい! 楽しみです!」

 初参加で要領のわからない僕たちは1時間ほど前に会場に到着したのだが、それでも何組も参加者らしき人たちが集まっていた。
 ユズは今日のために買った新しい服を着てはりきっている。ふたりで選んだ体操服のように動きやすい服だった。いつもと違う装いのユズもとてもかわいらしい。
 周りの犬を見ると、何かを着ている子は少なく、あってもバンダナ程度だ。できるだけ動きの妨げにならないようにとのことだろうが……ユズの場合はそうはいかない。何せ何も着てなければ僕の横を走るのは全裸のうら若き少女であって。競技どころではない。僕だけがだけれど。いやいや今考えるべきはそんなことじゃない。

――やっぱり結構規模が大きい大会みたいだ……どうなることやら。

 ある程度頻回に開催される大会ということもあって、どこかのショッピングモールの催しみたいな小ぢんまりとしたものではなく、定員は多い。事前に見学できればよかったのだが、いやしかし僕たちなら大丈夫に違いない。

「よし、じゃあ一応練習しておこうかな」

「がんばります!!」

 僕は独り言のようにユズに話しかけた。帰りにはどんなご褒美を買って帰ろうか。そんなことを考える余裕すらあった。

 

 

 ――さて、蓋を開けてみれば大会は準優勝に終わってしまった。優勝は大人しそうなボーダーコリー。かなり美人さんだ。名前はなんといったか――確認すらしていなかったのでわからない。勝負にならないと思っていた相手のことだから、それも当然の話だった。
 始まる前は余裕だろうと思っていたけど、いざ人前でパフォーマンスを披露するとなると緊張も生じた。飼い主側にも指導手として則らねばならない要領が細かく決められており、小さな減点を受けてしまったことが直接の敗因だった。つまり、大体は僕が悪い。僕が敗因だった。
 余裕で優勝してめちゃくちゃに褒めちぎられることを期待していたユズは尻尾を巻いて縮こまってしまっていた。僕がそうさせたかと思うと胸が締め付けられる思いがした。でもここで謝ることは悪手だと思い、かといって慰めるのも、初出場で準優勝は誇るべき結果なわけで――などといろいろ考えた。でも解答は見つからなかった。
 それもそのはずで、そのときの僕は僕たちをおさえて優勝したペアのことで頭がいっぱいだったのだ。侮っていたこちらが恥ずかしくなるほどに、それは素晴らしい動きだった。それゆえに悔しいという感情はなく、ただただ打ちのめされた感じがしていた。

 

 成績発表後、そんなこんなで何をするでもなく佇んでいる様子の僕たちに近づいてくる人影があった。

「アジリティも意外と奥が深いでしょう?」

 柔和な笑みを浮かべて話しかけてきたのは優勝したペアの線の細い印象の男性指導手だった。その脇にはぴたりとボーダーコリーの女の子が寄り添っている。競技中もそうだったが、まるでカップル――いや、高貴な身分の旦那様と有能な付き人みたいなふたりだった。

「そうですね……」

 そう答える僕の心中は穏やかではない。たった今脳裏に思い描いていた理想のふたりから話しかけられたのだ。正直な気持ちを言えば、僕たち以上に通じ合っているかのようでとにかく羨ましかった。その秘訣を伺いたいぐらいだ。でもまずは敬意を表しなければならない。わずかに残っていたらしい理性が僕にぎりぎり社会性もたらした。

「本当に素晴らしい動きで感動しました。アジリティというものをまったくわからないままに出場した僕たちはなんと言いますか、恥ずかしいぐらいで……」

 言ってから遜りすぎたかな、と思ってちらりとユズを伺ったが、ユズも小さく頷いていてほっと胸を撫で下ろした。
 ちなみにアジリティとは今回僕とユズが参加した、犬の障害物走みたいな競技のことだ。トンネルやハードルなどが配置されたコースを決められた順序でできるだけ早く回ることを競うものだ。
 首肯し、相槌を打ってくれる彼に僕は続けた。

「でもなかなか、決められたとおりに動くのは難しくて……はい」

「ふむなるほど。おふたりはとても強い信頼関係ができているのですね」

 ゆったりとした口調で彼は言った。気落ちしていたユズだったが、その言葉を褒められたと素直に受け取ったようで僕の脚に軽くじゃれ付き、喜びを示した。人前では安易に会話をするわけにはいかないので、嬉しいときのユズはいつもこうする。犬のころとほぼ同じ動きだった。

「と、言いますと?」

 そんなユズの耳の裏を指先で軽く撫でてやりながら、僕は訊ね返す。

「ああ……決められたとおりに“動かす”のではなくて“動く”と仰ったでしょう? その子への指示に関しては絶対の自信を持っていらっしゃるのだと感じまして」

「なるほど……まあ、この子とはずっと一緒にいますから」

 そう答えた僕は、内心少々反省した。当たり前のように意思疎通ができると、こういった細かな言葉の端々にその影響が出てきてしまう。だからといって、それがすぐさま『異常に意思疎通がとれる』という風に捉えられることは、まずないのだけれど――

「まるで、言葉でも通じているかのようですね」

 そう言って、目の前の彼はくすくすと小さく笑った。僕と撫でられていたユズは、一瞬ぴたりと動きを止めてしまった。しかし、僕はすぐに再び手を動かし、彼に合わせて小さく笑う。俄かに手のひらから発汗があって、受ける刺激の強くなったユズがする身じろぎも気に留めることができなかった。

「――あんまり、からかうものじゃないわ」

 張り詰めたような雰囲気に、鈴の音のようなかわいらしい声が割り入る。僕は思わずびくりと顔を上げたが、そこには少し肩を竦めた指導手の男性が立っているだけだった。その反応を見るに、今のは空耳ではないらしい。呆気にとられる僕だったが、ふと足元を見るとユズは正面を見据えたまま、見たこともないような表情をして固まっている。その視線を辿ると、そこに座る子の、じっと見定めるような視線がこちらを射抜いていた。

「えーと……あれ?」

「お話しできるのは君たちだけだと思ってましたよね。驚かせてすみません」

 男性はゆっくりとしゃがみ込むと、居住まい正しい彼女の体を両手でまさぐり始めた。彼女はなすがままだ。その手は腰からおなか、胸、喉元そして頬と隈なく撫でさすり、最後にはなんと口付けを交わした。
 呆然と立ち竦む僕と赤面するユズ。そんな僕たちの様子はまったく意に介さず、口の端をわずかに上げると、彼は言った。

「申し遅れました。私は内原、この子はアヤノといいます。どうぞよろしく」

何番煎じかわからない - 第二部

 僕らの関係性もある程度落ち着いてきたある日、ソファに座る僕に寄り掛かるようにしてテレビを眺めていたユズは急に身を乗り出すと、弾けるような動作でこちらに振り向いた。

「おにいさん今の見ました?」

「え? テレビの話? ごめんよく見てなかった」

 僕が観ていたのはユズだったから仕方がない。そんな返答をもろともせず、ユズは僕の膝の上に甘えるようにしな垂れ、体を捩ってこちらを見上げた。

「わんこの、大会? みたいなのがあるですか」

 ユズの頭を軽く撫でてやりながら視線をテレビに向けると、ちょうどそこにはよく躾けられきびきびと動く犬とその飼い主の姿が映されていた。どうも何かの競技会の様子を紹介する番組のようだった。

「たのしそうです……わたしもあれやりたいです」

 ユズはテレビに顔を向けると、きらきらした表情で溜息を漏らした。勢いよく振れる尻尾が時折脇腹にまで当たってくすぐったい。

「この辺でああいうイベントがあったかな……ちょっと調べてみるよ」

「本当ですか?! れ、練習しなきゃ……!」

 僕の肯定的な返答にユズはころりと床に着地し、飛び起きて落ち着かない様子で腰を下ろしてこちらを上目遣いに伺っている。彼女の喜びようには毎度微笑ましさを感じずにはいられないが、まだその希望が叶うことが決まったわけではない。

「気が早いよユズ、これから調べるんだから。まずそういう大会があって、その内容がわかってから初めて必要な練習ができるんだからね」

「でも、でも!」

 続けて撫でようと頭の上に持ってきた手に顔を擦りつけながら、ユズは懇願してくる。

「テレビの子も、たのしいたのしいって……ご主人様と一緒に訓練するのが好きって……」

「そんなこと言ってたんだ。そりゃ、僕もユズと一緒に何かの目標に向かって頑張るのは楽しそうだなって思うけどね」

「はい! そうです! やりたいやりたい!」

 ユズの意見に同調すると、彼女はそう言いながら僕の脚の間に割り入ってきて顔を舐めようとするので、その前に手を挟み込み少し顔を逸らして遠慮した。
 ユズは拗ねたような顔をして仕方なくといった風に僕のおなか辺りに顔をうずめた。

「すぐに調べてみるから、ちょっと待ってて」

 よしよし、と代わりに頬を両手で挟み込むようにして揉むなどしてやりながら、僕はどこかで開かれる大会で活躍するユズの姿に想いを馳せた。どこの犬よりも僕らは確実な意思疎通ができるんだ、負けるはずがないだろう。そうしたら何かご褒美を用意しておかなければならない。なんでもユズは喜ぶだろうが、何をあげたら、何をしたら、より喜んでくれるだろうか――
 考えながらユズの体を弄ぶ。きゃあきゃあと声を上げながら身を捩るユズにこちらの手もエスカレートしていく。
 そのときの僕はまだ、その後に待っている大きな変化の予兆に気づくことができずにいたのだった。

何か楽しいこと言って?

 最近は書くことがなくて日記を書いていませんでしたが、本当に書くことがなかったのか、振り返ってみるとなるほど、帰ったらずっとふにゃふにゃしながらゲームやってるわけですから、そりゃそうだって感じですね。ダメですよダメ。何も楽しいことなど言えないん。

 

 まあそういうわけで、他人が聞いて楽しい話題ではないでしょうが、最近は牧場物語の新作を買ってやっています。

 牧場物語といえば、私はハーベストムーンからちょこちょこやっているクチなのですが、そこまで熱心なファンではないので口は噤んでおきましょう。

 今作の所感だけはせっかくなので残しておきます。

 

 部屋の中で時間が進むのがうぉぁって感じ。

 農作物や畜産物のステータスが多くてやばい。

 時間に追われていろいろなことができない。

 未だに虫とかトロフィーの一覧が見られるのかどうかわからない。

 攻略本を間違えて大丈夫じゃないやつ買ってしまって凹んでいる。

 男キャラ選んで女みたいな容姿にすることで事なきを得た。

 夏に紫蘇の栽培が遅れて詰んだ。

 花屋が最初から媚びてきている感じがしてとてもこわい。カスミさんくらいでたのむ。

 野生動物が仲間になると思って必死にコミュってたけどダメでした。

 馬に乗って即金バイトすると迷子になる。

 大黒屋のDMの言葉遣いが気になる。

 双子の私みたいな名前の方が好きなわけですが、段々女王様の方もかわいく見えてきた(ちょろいオタク)

 花屋はコーンミールを紅茶に入れるな。

 フルーツパンにすいかを使うな。

 バナナ植えるタイミングミスってただの観葉植物になった秋のこの頃。

 大きい動物小屋作ろうとして大きいトリ小屋もうひとつ作っちゃったのでおしまい。

 

 こんなところですかね。

 あんまり拘らずにさくさく進められてるのでとりあえず2年目には行けそうです。早くいけすが欲しい。じょうろの範囲と容量を強化したい。

 

 

 あと何やってただろうか。アニメもあまり観られていないのです。

 タブー・タトゥーとアイスタちゃんとももくりを観ました。

 魔装云々と美術部云々とタイムトラ云々は1話しか観ていません。早く観なきゃ。

 

 

 ああそうです。ちょっとくらい何か書きたい気持ちはあるのでした。まずは集中して想定を練る訓練をして、勘を取り戻す必要がありますので如何ともしがたさ。うぇぇん。


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