たしかに正しいけど、その通りだけど。

ブログじゃないという体でまとまった文章を置いておきたい場所

書き散らかし

無気力に細切れに12

人ひとりが横になることもままならない正方形の板間、その角に簡素な皿に立てられた蝋燭の明かりが細かく揺れていた。部屋、といってよいのだろうか。何せ調度品などはもちろん、窓すらない。壁も床と同じ木の板で仕上げられている。わずかな光源で窺い知る…

無気力に細切れに11

翌朝、気分晴れやかに家を出た櫻子は一転、直後にひどく落胆した。しかしなんとか、どこかでそんな気はしていたのだと自身を落ち着け、静かに門の傍で向日葵を待った。 遅刻ぎりぎりまで待ったが、結果は芳しくないものだった。 何度か向日葵の家の前まで行…

無気力に細切れに10

昼休み、櫻子は二年の教室へと足を運んだ。 今日の放課後、櫻子と向日葵は綾乃に呼び出されていた。何の用事なのか詳しくは聞いていなかったが、早い方が良いだろうと向日葵が本日欠席であることを伝えに行こうというわけだ。 「そ、そうなの。それは心配ね…

無気力に細切れに9

――まだまだ蒸し暑さが続いて寝苦しい深夜にあって、向日葵は布団を被って震えていた。 「なに……? どうしてこんなに寒いの……」 悪寒戦慄。向日葵は必死に自らの両肩をかき抱き、なんとか体温を逃すまいとしていた。しかしその動作は緩慢である。 「体が、重…

無気力に細切れに8

まあきっと、そういうこともあるのでしょうね。 元はかなり説明的だったのを削り散らかすあれを施しています……。 ******** 翌日、彼女らは前日の約束どおり放課後に部室に集まって箱の攻略を続けることにした。 メンバーは昨日と同じ六人で、結衣は…

無気力に細切れに7

きっと、そろそろ死ぬんじゃないかな? ***** それからしばらく経って、箱を弄る京子がだらりと両腕を卓上に投げだして泣き言を言う。 「あーダメだー。これ、壊れてるんじゃないの?」 「そんなわけないだろ。何回かはちゃんと動くじゃないか」 「だっ…

無気力に細切れに6

実はちょこちょこ中身を弄ってるのは内緒。 ちょっと弄ればすぐに開けられるかもしれないなどと高を括っていた櫻子だったが、まったくそんなことはなく、一手動かしたきりになってしまった。当然次の授業も上の空のままに過ごし、チャイムが鳴ると起立、礼も…

無気力に細切れに5

休み時間になって、櫻子は例の箱を開けてみようと思い立った。授業は休み中に出ていた宿題の提出が主だったこともあって、終始箱のことで頭がいっぱいだった。 櫻子にはあの箱の中に何かすごいものが入っているのだという予感めいた確信があった。そんなこと…

無気力に細切れに4

ふぉっ、ふぉおっ、ふおおおおっ!(モンエナをキメる) ――翌日、休み明け初日の朝。 「櫻子、いつまで寝てるの。今日からもう学校でしょ」 「もう少しー……?」 呆れたような母の声にぼんやりとした意識で返事をした櫻子だったが、ちらりと時計を見ると慌て…

無気力に細切れに3

私の信じる趣というのは、慎ましい犬の諦観と心酔と報奨と無念に寄り添っています。 ――今は一体何時なのだろうか。そもそも昼なのか夜なのか。ぼやけた意識で向日葵はそんなことを考えていた。雨戸を閉め切り、また別の窓には遮光カーテンを引いた部屋の中は…

無気力に細切れに2

――千歳は幼少期より妄想の強い子供だった。正確には、妄想の強い子供だと、みなされていた。 物心つく前の千歳は、双子であったにもかかわらずに独りで遊ぶことが好きな内向的な性格だった。しかし時折、普段の彼女がそんな性格であるとは到底思えないほど快…

無気力に細切れに

不定期に破片をばらまく遊び。 ――部屋に敷かれた布団の上に、結衣と京子は手を繋いだままに横たわっていた。 部屋に辿り着いた瞬間結衣が血を吐いた。それではっきりと自分たちの運命がわかってしまった。遠方に離れるだけではもうあの凄惨な死からは逃れら…


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