2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧
12. 弱ったナツの世話をまちに任せてふたりの元を離れたオレは、まっすぐ帰途に就いた。 自宅に着き玄関の戸を開けると、そこには両親が揃って待ち構えていた。 面食らうオレを無視しておやじが言う。 「よしお。話がある」 「……はい」 そのいつになく厳…
11. 慎重になればなるほどに震える体をなんとか抑え、ボクは廊下を進んだ。 薄絹一枚を身にまとい、軽いはずの体なのに、それでも満足に動くことができない。 どうしてこのタイミングなのだろう。 なんでこんなときに、あの人は来たのだろう。 そして、あ…
10. 「ねえよしおくん! そろそろ起きて!」 「んあ……なんだ送れって?」 学校かどこかへの送迎を頼まれたと寝ぼけているよしおくんを、激しく揺すり続ける。 いつも出勤ぎりぎりまで寝ているような彼にして、こんなに寝起きが悪いことが今までにあっただ…
9. 翌朝、私が目覚めると、隣の布団で寝ていたはずのまちさんはすでにいなくなっていた。 ゆっくりとした動作で携帯を確認すると、時刻は8時を過ぎたところだった。 昨晩はまちさんからいろいろな話を聞くことができた。さすがに警戒されている部分もあっ…
8. 「え! まち帰って来ないの?!」 うちに来るなり良夫はボクに「今日、まちはオレのうちに泊まるから」と言い放った。 「いい機会じゃんかー。いろいろな人と関わった方が、まちのためになるって」 「でもさー。今日とても気を張っていたみたいで、家に帰…